避難訓練

大方児童館では、「考える避難訓練」を目指して、地域の大人も巻き込みながら実施しています。

児童館の避難訓練の特徴は、スタート地点が地域の中にあることです。そこから高台にある学校や、津波避難タワーなど、状況に応じて適切な避難場所に走っていけるように、パターンを変えた訓練を展開しています。さらに発災時には、避難道にはいろいろな障害があることが想定されます。想定していた道が閉ざされてしまっていたりするかもしれません。

どうやって回避して避難場所を目指すべきか?そうした訓練を普段から行っておくことで、臨機応変な態度や思考を育成することを目指しています。

活動報告

2023年度

町内に住む外国人との避難訓練

黒潮町内の工房で働く、ベトナム人の技能実習生の方と一緒に津波避難訓練を行いました。
黒潮町に住むなら、地震や津波、避難のことについてはもちろん知っておくべき重要なことではありますが、日本語を母国語としない人にすべてを伝えることは難しいことです。
役場が主催する勉強会で、防災のことを取り扱う機会もありますが、今回は、実際に地域の中での避難訓練を一緒に体験することになりました。
子どもたちには「逃げトレ」をレクチャーしてもらいました。自分たちがガイドすることで、津波避難の理解も深まることを期待しました。
外国人との交流ということなので、せっかくなのでベトナム語を教えてもらうことにしました。避難時に必要になりそうな「逃げろ」・「はやく」・「あぶない」の3語を、ベトナム語ではどのようにいうのか?本場の発音と一緒に教えてもらいました。簡単な3語ですが、いざというときに役立つかもしれません。子どもたちは、この言葉を実際に使いながら、高台まで避難訓練をしました。
町内に、日本語を母国語としない人が在住していること、その人たちとも一緒に津波避難について考えていく必要があることについて学習したことで、自分が助かることに加えて、周りの人も助かる方法も考えていくことの重要性に気づく機会となりました。

2022年度

車いすを体験しながらの訓練

地震が来たら、まず自分の命を守って安全な場所まで逃げることが第一ではありますが、時として、”救助する側”になることがあるかもしれません。そこで、車いすをお借りして、「救助する側の視点を学ぶ」こと、「普通に避難するときと時間の比較を行う」ことを目的とした避難訓練を実施しました。

社会福祉協議会さんにご協力いただき、車いすを扱う時の注意点や、道路上の困った状況の対処方法などを聞いてから、高台にある小学校までを避難しました。道の状況がすぐに車輪に影響することや、なかなかスピードを出せないこと、力の入れ具合、坂道や側溝への対処方法などを体験しました。

座っている側にもいろいろな学びがありました。目線が低くなるので、いつもは気にしない高さのブロック塀も、高く感じて怖く思います。後ろで何が起こっているか分からないので、なにか特別なアクションを起こす際には声をかけてほしいと思ったり、ちょっとした道路のへこみも怖く感じました。

こうした体験を通じて、いざというときにパッと行動できるように、知っておくことが大事だと、子ども達も感じてくれたと思います。普通のスピードより遅くなってしまうことにも気づいてくれたので、みんなが助かるためにはどうすればよいか、次の思考のステップにもつながりそうです。

2021年度

あえて失敗する訓練で災害時に備える

児童館で行う避難訓練の特徴は、スタート地点が、子ども達が日常を過ごす地域の中にあるということです。しかし、いろいろな所を遊び場にする子どもたちは、放課後の拠点をたくさん持っています。
子ども達には、「いつどこにいるときに地震が起きても、臨機応変に動けるようになってほしい」ので、いろいろな場所からの避難を想定した訓練が求められます。

2019年度にも行った「みんな、放課後どこにいる?調査」を再度行うことにしました。今回は、小学校の先生にもご協力いただき、すべてのクラス(ほぼ全校生徒)の子ども達の放課後によくいる場所を知ることができました。
すると、今回は、スケートボード場(通称:スケパ)に多くの子ども達がいることが分かりました。オリンピックの影響もあるのでしょうか?前回とはまた違った結果になったことに、驚きました。

子どもたちが良く過ごす場所は、毎年変わっていくのかもしれません。議論の結果、この調査を、毎年行うことが決まりました。

スケパは、高台にある小学校からは少し遠いところにあります。その道中には、津波避難タワーが2つあります。しかし、あえて遠いところまで避難できるかどうかを検証することにしました。地震発生後、避難を開始する時間にもよりますが、今回の設定では、ぎりぎり避難が”失敗”しました。(逃げトレを使って検証しました。)

こうした”失敗”の経験も、訓練で行うからこそ、重要なデータとなります。子ども達には、だったらどうすべきか?を考えてもらい、避難訓練のまとめポスターにまとめました。

2020年度

エクストレッチャーで支援を考える訓練

元気な子どもたちには、いざというとき、自分の身を守ったうえで、救助者としても活躍が期待されます。例えば、脚の不自由な方は、津波避難タワーの下まで避難できたとしても、階上に上ることが困難です。そこで、エクストレッチャーという救助ツールを使った訓練を行いました。

エクストレッチャーは、炭酸ガスを吹き込むことで、階段もずるずると引っ張ることのできる簡易ベッドとなる、とても重要な道具です。子どもでも組み立てることができるのか?子どもでも大人を引っ張り上げることができるのか?そうした検証を行いました。

多少の手間取りはあったものの、子どもだけで組み立てることができ、そして子どもだけの力でも大人を階上まで引っ張り上げることができました。   この様子は、地域の住民さんも見守ってくださり、「大人も頑張らなあかんなあ」と感想を伝えてくれました。子どもから発信する防災活動に一歩踏み出せたのではないでしょうか。

2019年度

普段過ごしている場所からの訓練

児童館は、子どもたちが放課後に過ごす場所です。しかし、児童館だけが子どもたちの放課後の居場所ではありません。塾や習い事に通うこともあれば、サッカークラブの練習のために地域内にあるグラウンドで過ごすこともあります。友達が多く住んでいる住宅地にみんなで集まって遊ぶ、ということもあります。そのため、「いつどこにいるときに地震が起こるかわからないから、臨機応変に動けるようになってほしい」という思いがありました。そのためにどういう訓練が必要かを考え、その最初のステップとして、子どもたちが児童館に来ない日にどこで過ごしているかを知るために「みんな、放課後どこにいる?調査」を行いました。

調査の結果、子どもたちは、平日の放課後、大きく分類して3つの場所で過ごしていることがわかりました。そしてその場所をスタート地点とする避難訓練を行いました。子どもたちの生活実態に合わせているため、子どもたちにとってもなじみの深い環境で訓練が行われました。

そして、今回は、どの道で避難するかについても子ども達自身で考えてもらいました。おそらく安全と思われる道は、本当に安全なのでしょうか…?歩きなれた道を、改めて防災の視点で見つめることで、普段は見えなかった“危険”が浮かび上がります。その訓練の結果を、子どもたちはポスターにまとめました。

2018年度

臨機応変に避難経路を考える訓練

避難訓練は、状態のよいときに行われます。災害時に、道路が同じように問題なく歩けるかどうか、ということはわかりません。ブロック塀が崩れているかも…何らかの理由で道がふさがっているかも…地割れしているかも…いろいろな理由が考えられます。そのため、避難の経路をたった一つに決めておくのではなく、臨機応変に考える力を養っておくことも重要です。

そこで、地域住民の方にもご協力いただき、避難経路上に“通行止め“を作り出しました。発災時の道路閉塞を想定して、住民さんに、“通行止め看板”を持って各所に立っていただきました。そうすることで、必然的に、避難中の子どもたちは、臨機応変に迂回しなければなりません、「逃げトレ」を用いて津波が来るまでの時間をチェックしながら“阻止ポイント”を回避する中で、子どもたちには、通学路ともなる道中の危険な箇所を発見してもらいつつ、臨機応変な避難行動を考えてもらいました。

2017年度

複数の避難先を考える訓練

近くの津波避難タワーへの避難よりも、走れるのならば、より高台へ向かうことは可能ではないだろうか…?そうしたより確実な避難を検討するために、「逃げトレ」を使って、発災後15 分後から“ゆっくり歩く設定で”、高台の学校に向かう避難を行いました。なぜ15分という猶予を与えているかというと、児童館での滞在中の発災を想定しているので、発災後15 分間は、まずは身を守り、安否確認や救助活動を行う時間を設ける必要があると考えたからです。  

その結果として、発災後15分後に避難を開始しても、徒歩 10分程度の距離にある高台の小学校まで、津波到達までに余裕をもって避難完了することができました。これは、津波という外力を「逃げトレ」で想定したことで得られたものです。このスピードで学校に逃げても間に合うのであれば、そもそも最初から学校に向かって走るように指導していくことになりました。そして、それでも間に合わない!と判断した場合には、第2の避難先としての津波避難タワーがあります。避難先に複数の選択肢を持っておくことが重要だとわかりました。

2016年度

ほぼ同じ距離の2つのタワー、どちらがよいか比較の訓練

児童館の近くには、同じくらいの距離に、2基の津波避難タワーがあります。一つは“少し近い気がするけれど、海に向かって進まなければならないタワー(町地区タワー)”。もう一つは“海を背にして向かえるけれど、少しだけ遠い気がするタワー(万行地区タワー)”です。この2 基のうち、どちらが児童の避難先として望ましいのでしょうか?いざというとき、より早く判断できるように、「逃げトレ」(※)を使った訓練を行いました。

子どもたちが時間を計測しながら訓練を行った結果として、僅差ではありましたが、より短い時間で到着することのできたタワー(町地区タワー)を第 1 避難先として設定しておくことを決定しました。実際の訓練を通して、いざいというとの判断に自信を持てるようにしておくことの重要性を学びました。